南アルプス北部のエリア。
地図を眺めていてずっと魅力的だと思っていた沢旅、実行する時が来た。
恐らく、私以外にも何人もの沢屋がこのルートは構想に上がっていたことと思う。
笹ノ沢→東鬼ノ窓→黒川・喜平谷→鬼ノ窓→鬼ノ窓沢→中ノ川→中川乗越。
どうだ!!と言わんばかりのルートではないか。
沢の遡下降の継続、合理的に沢を辿る美しさを感じる。
三ツ頭まで遡行すれば直線となるが、中川乗越と名がある場所があるのなら、そこに詰め上げたいと思った。
さて、出発は神宮川のダートとなる場所から。
神宮川本谷以来。
相変わらず、沢で寸断された道は復旧される様子はない。
天気は良さそうで、沢日和だ。
軽トラックが終点まで入っており、お二人に会う。どうやら、キノコ採りが目的のようだ。爆竹を鳴らしてクマにアピールしていた。
林道歩きは短いので、すぐに、笹ノ沢出合。
水は冷たいが、積極的に水に浸かることは想定していないが、どうでしょうか。
シャワークライムも出来そうだが、今日はそういう気分ではない。
右の壁を登っていく。もっと手前にはロープがあったような気がする。
上り終えると、その先は小滝。
こちらの滑滝は結構大きい。10m以上ありそう。
左から楽しく登っていく。
2m程度の小滝。水線沿いを通過。
この調子で滝が続くのを期待してしまう。
その次、大きな滝。20mくらいありそう。
右のクラックが気になる。ドロドロだろうけれど、惹かれるライン。
水流沿いは厳しそうですね。登れそうな気はしない。
巻きは迷わず、右岸から。特別危なげなし。
その後も小滝が続く。
盛夏ならば、シャワークライムが楽しいだろう。
日も差して、気持ちがいい。
水流は思ったよりも豊富なので、滝も美しい。
左に見えている滝の近くを登っていく。
3~4m程度の滝、数えきれないことになる。
ドラム缶が転がっていた。いつの時代のものか。
左の巨岩が威圧的。古いケーブルがあり、それを少々利用して水流ではないところを突破。巻いた方が楽だったと思う。
どんどん小滝が続く。撮影で全く捗らない。嬉しいことである!!
まぁ、それでも気になること・・・。
釣り師用と思われます。幾つもあったり、巻き道にロープが多い。
明らかに通過するだけであれば不要だが、これを利用して良いポイントに打ち込むのだろう。
魚が走る。滝も美しいし、好きな渓相。
凄く小さいが、小釜も綺麗。癒し系。
少し狭まるが、楽々通過。
ビランジもあった。
水流はちょっと寒そうなので、左を通過した。
撮影大会と化す。
右からの支流。巨岩がちょっと気になる。
幾つ滝があるのだろうか。
さて、この滝は、ちょっと気になった。
盛夏であれば、右から取り付いて、水流を攻めたいと思う滝だった。
上部どうでしょうか・・・。再訪して、試してみたい滝。
巻きは右岸。
こんな様子で楽々。ロープには頼らずに問題ないけれど、フィックスする労力に感心するところだ。
巻きの途中から、左岸から落ちる滝が気になっている・・・。
20mくらいはありそう。素晴らしい。
紅葉も色づき始めという様子で楽しめた。
その先に見えるは・・・。
左に落ちる10m程度の滝。
直瀑で、直登は不可能。
巻きは、そのまま右からとした。少々急で足元が崩れる。
途中で、携帯電話と遡行図や山行予定が記載された落とし物を見つける。
回収。下山してから対応するとしよう。
傾斜もあるので、木登りに近い感じで、左にトラバースして滝上へ出る。
右岸から支流。徐々に水流も減るかと思いきや、そうでもない。
これは、7mくらいか。右から巻く。
ミズゴケが茶色く・・・。これには注意が必要ですね。
上にはケーブルがあった。
2つ目のドラム缶を発見。昔の人々の営みに逆に関心する。
雨ヶ岳方面から転がってきたのだと思うが。
その後も同じような渓相が、ほぼ途切れない。
二俣だけれど、右は無名沢のよう。
少しすると、また二俣。
左の本筋を行く。
こんなに笹ノ沢が私好みだったら、この右沢へ入って、雨ヶ岳とセットで再訪してもいいと思う。(上から目線)
まだ魚影もある。飽きさせない。
相変わらず、撮影で歩みが遅い。
この滝は、やる気でもちょっと登れないか。
左から滝が落ちるのが見えてくる。いいですね。
美しい。高さは6mくらいか。
本流より、この滝の支流の方が水量豊富だ。
本流は余り流れていない・・・。
徐々に詰めの様相を呈してくる。
この滝では終了。小滝は幾つあったのだろうか。
カツラの芳香が、またこの辺でも香っており、来てよかったと思わせてくれる。
巻きは右からで適当に進んでいく。
そろそろ水枯れも近い感じ。
紅葉が上部は目立つ鮮やかなものもあった。
上部はスラブか?と思うが、沢をそのまま危なげなく進める。
水をこの辺で補給して詰める。
鬼ノ窓の付近は花崗岩が見事な場所もあり、紅葉とともに楽しめる。
そして、詰めもあっさりと終了。
標石は角が欠けて傷んでいる。この稜線は、また来ることがあるかどうか。
紅葉狩りしながら、黒沢へと、向かいの沢を下る。
風化した花崗岩の砂床で、倒木も少なくて歩きやすい。危険も無い。
あっけなく、黒川にそのまま降り立つ。
ゴーロで広め。シカが飛び跳ねる。
左岸沿いを進むが、獣道のようで、はっきりしていた。
登山大系では、黒川はここより下部がゴルジュとなっており、楽しいそうだが、この先はどうでしょうか。
沢は余り美しくはないが、紅葉は綺麗なので、気分は良く進める。
右岸からの支流が滑滝になっている。10mはありそうで、紅葉も相まって良い。
水流はミズゴケでこれまた変わらず。
沢床に近いのに、ビランジが健気に咲いていた。まだ見られることが嬉しく癒される。
また、右岸から乏しい水量で水が落ちている。スラブの一枚岩でその先はどうなっているのでしょう・・・?
これも右岸の支流滝。7mくらいか。
本流に滝が全く無いのが寂しいところだが。
これを見送ると、右壁が威圧的に聳える。
30m以上は優にある。岩屑が堆積しており、落石が気になるところだ。
先日の地震の際も北アルプスなどは崩落した岩が多数あったようなので、身構える。
こんな中にもビランジが咲いていたのは、何とも自然の妙というか。
それとも、意外と大水や落石が少ないのだろうか。
いずれにしても、足早に通過する。1つCS滝があって、左の側壁を登る場所はあったが、問題なく通過した。
詰めは、適当に小尾根など経由しながら沢を見下ろしつつ。
あそこが、鬼ノ窓の直下。なのだが、このザレが悪い。
写真で伝わらないが、危険を感じる傾斜で崩れやすい。
もっと大きく巻けばいいが、面倒で、そのままキックステップで崩れる前に足を出して登り切った。ここまでで一番悪い。
鬼ノ窓には古い赤テープが見られた。疎林なので、大岩山まで簡単に行けるのかもしれない。
黒川の下~中流域は、是非とも行きたいので、またここにも来ることもあるか。
この流域は、下山路やアプローチも長くなるので、単発で沢を終わらせることが勿体ない。継続で楽しみたいところだ。
登山大系には、『甲斐駒随一の静寂境』とあり、とても魅力的に感じている。
ここから、鬼ノ窓沢を下る。
こちらも、出だしは歩きやすい砂地。
傾斜もそれほどではなく、手を使う箇所は限られる。
問題なく、花崗岩の滑、右俣本流に合流する。
フリクションは良く、水流沿いでなければ大丈夫。
中ノ川を隔てて、あちらは編笠山。あそこも今回のターゲットである。
荒沢のガレが何とも。左俣を楽しむにしても、あの様子、通過できるのでしょうか。
沢の方は、水流はヌメヌメだが、外せば問題なし。
それでもルート取りをミスすると、緊張する傾斜になる。
これは10mくらいか。写真左の溝を、倒木利用で滑り降りてきた。
滑がしばらく続く。
ちょい狭いところもあって、アクセントになる。
飛び降りられなかったCS滝。
その次、結構な落差の滝のようで切れ落ちている。
右岸にいて、対岸に渡るのが面倒だったので、そのまま下る。
かなりの傾斜で、最後には古いケーブルも使って飛び降りた。
ライン選べば安全に下れると思う。滝下から見ると、左岸が圧倒的に楽そうだった。
巻いたその滝は・・・。
見事な滑滝。10mちょっとと思う。青空とセットで美しい。
この沢一番の滝でしたね。
その後は明るさは後退。
この滝のクライムダウンは、写真の左からだった。
下るには嫌な傾斜で、ちょっと緊張した。
こんな様子で、連瀑っぽい。困難さはないので、癒し系だ。
その後は、沢は狭くなる。
出合前では、こんな滑滝が続いていた。水線沿いをヌメりに注意しつつ下る。
決して難しくは無いが、ヌメりは注意。岩質が変わっているのもあるか。
間も無く、明るい景色だが・・・。
そこには、堰堤と廃林道が目に入ってくる。何とも、残念なことである。
出合のナナカマドが、少々気を紛らわせてくれるが。
小休止して、中ノ川を遡行する。遡行というよりも、河原歩きになるので退屈。
堰堤も見えており、沢沿いより、廃林道を歩いた方が早そうなので、そちらへ。
右から通過する。
これがあるお蔭で、下部のゴルジュが埋まらないのかどうかは分からない。
いつまで車が入れたのでしょうか。今は虚しいだけの景色。
道ごと捨てるつもりなら、ガードレールが必要なのか怪しいものだ。
この堰堤が最終。よくここまで作ったよ・・・。
護岸工事まで。もう崩壊寸前のように感じるけれど、堰堤作るまでには必要だったのでしょう。
治水や治山については知識が無いので、素人ながら何とも言えないが、近年の気象からすれば、効果は限定的かもしれないと思う。
長期的に見れば、人間の悪足掻きとも思える。
さて、沢以外は・・・。
左岸から、水流は乏しいが、滝が高くから落ちていた。
ここで水を汲む。
滑滝が少しずつ出始める。ゴーロ主体の中で貴重。
紅葉はもう少し待っても良いところだが、それでも十分だ。
乾いたところは、ラバーソールが抜群のフリクションで歩ける。
水の色は綺麗だ。
段瀑。左から通過。上の七ツ釜も、こんなのが連続するのかと想像しないわけがない。
滑滝のそばを通過。これなら、楽しめる。
紅葉と滑滝。中ノ川に合流した時には、どうなるかと思ったが、安心。
右岸には、古い目印に加え、トラロープがあるのを発見。近年入る人がどれほどいるのか疑問に感じる。
振り返って。あれが大岩山のようだ。ここからだと、特に見栄えが良い。
独特の岩が顕著となっていく。そろそろか。
ここが、七ツ釜の入口。
積年の!!
空身で右から、この場所から覗いてみたが、可能性は感じる。
クライミングシューズ持参ならば、何とかなるかも?
さて、迷うところで、ここで幕営してもいいが、もう少々この七ツ釜の全貌を確かめたいと思い、右岸を下から巻きにかかる。
目印も発見していたので、もしやと思ったが、それ以上の目印が続いていた。
こんな様子。また、果物ネットのような目印も多かった。ネット上には、記録・情報が殆どなかったので、トラロープまであるのは驚くしかない。
そのルートが正しいのかは不明ではある。踏跡は無いも同然であるから。
それでも、植生が薄い所に概ね付いているので、参考にはなる。
右を気にしながら、滝を俯瞰できる場所を探る。
そして、発見!
これ以上乗り出すと転落するのだが、十分な景色だ。
本当に来て良かった!!素晴らしい。何年か越しに来られて良かった。
荷物を下ろして堪能する。
空身で、釜の途中で灌木伝いに降りられないか、周辺を散策するが、駄目。
暗くなってきてしまい、時間切れになってしまう。
荷物デポした所がどこか分からなくなり、ちょっと焦る。
幾つか段になっているので、分かり難い。
沢床は底冷えしそうなので、小高いところが良いとは思っていたが、テントを張るスペースはこの巻きにはほぼ無い。
何とか、強引に横になれる場所に設営した。
一角は浮いた状態になっているが、ほぼ平らな場所で寝られるだけでも幸せなものであると思う。
そして、何より・・・。
この紅葉!! 贅沢というほか無い。
すぐに真っ暗に近くなってしまったが、木々の間からは星も見え、気分は上々。
出発時は、累積疲労で調子は余り良くなかったが、累計標高差も2600m程度だったので、疲労感が少ない。
笹ノ沢は特に滝が沢山だったし、七ツ釜も素敵で、元気をもらえたと思う。
それに、撮影が主と言ってもいいくらいの鈍足具合であったし。
幸せな気分で眠りにつく♪
ダウン上下を持参したが、下は必要なく、夏用シュラフで快適に眠れた。
2日目に続く・・・。