甲斐駒ヶ岳に丁度10年前に初めて登った。
その際に魅了され、『黄蓮谷』という存在を知った。
憧憬と畏怖の念を抱きつつも、いつかはそこへ到達したいという欲求があった。
去年の正月に甲斐駒ヶ岳に登頂し、その年の内に黄蓮谷を遡行しようと秘かに誓ったのだが、休みと天気の条件が揃わず、叶わなかった。
そして、今回実行へ・・・。
アプローチは最も一般的と思われる、日向山登山口から廃林道を歩き、尾白川へと下降するルート。
6時前に到着して、出発。
キノコ狩りの人もいたり、登山者もいた。
途中では崩落があった。
数年経っているようだが、過去に私が通った時は無かったもの。
アイスでガンマルンゼ等は登ったが、どこだか記憶が曖昧で分からず通過。
終点が近くなると、トンネルを3つ続く。
概ね1時間ちょっとで終点に到着。
下降は多少急だが、ロープもあって楽々。
肉厚で美味しそうなキノコだが、残念ながらツキヨタケらしい。
目印も踏跡もしっかりしており、入渓となる。
日も出てきて気持ちが良い。
緑色が強く美しい。
長丁場な上、上部が核心なので、遊ばず温存する。
左壁スラブを登っていく。
水中はヌメルが、乾いた場所はイドログリップでばっちりだ。
盛夏であれば、ウォータースライダーで楽しそうだ。
滑がいい感じ。癒し系の緩さ。
ワイヤーの滝。梯子滝というらしい。
滑り落ちないように、左から登っていく。
この滝は、釜が恐ろしく深い。4~5mはありそうだ。
バンドを伝って右を越えたが、落ちたら変な水流に巻き込まれて浮いてこれるかどうか不安になる。
難所なく進んでいくと・・・。
この滝は少し遠いが、釜の深さは先ほど以上かもしれない。
右からも登れるかもしれないが、そのまま左巻き。
穏やかな場所と・・・。
小滝が続く。
これは刃渡り沢ではない?もっと下流かな。癒し系はまだ続いた。
岩壁が素敵。
ひょんぐりは少ない噴水滝。地形図の場所は違っている。
噴水滝上も滝が続いていく。
この辺で、イドログリップでも水分があると、乾いた赤い部分のスラブは一度滑るとかなり危ないことに気付いた。
それでも特別問題は無く歩ける。
再度、右岸支流が落ちる。こちらは黒戸北沢かな。
青空が見えてテンション上がる。
目にしみる青空。
危なげなく、黄連谷出合に到着。右が本谷、左が黄蓮谷。
まずまずのペースで来られたので、ここで小休止。
ボヤボヤしていると、ここは本流に入りそうな?
振り返ると岩が見事ですね。
出合からすぐに8m滝がいた。
左右どちらも巻けるようだが、左から行った。
巻きに入ってびっくり。確かにいやらしい所だが、何という整備具合。
巻き終わると、先に大物が見えていた。
段々近づくと・・・。
右は坊主ノ沢。本流の左は千丈ノ滝。
こちらの坊主ノ沢出合滝も中々のものだ。
日本登大系では35mとあり、遡行は3時間と記載があるが、そんなに簡単か?
坊主山に登るなら、これで詰めあがればザッテルに楽々行けると思っていたが、結構立派で考え直しが必要かも。
ゴルジュ内で進退窮まったらと考えてしまい、やはり東稜乗越に出て、ルンゼを詰めるのが一番安全だろうか。
写真は見たことがあったが、千丈ノ滝がこれほど大きいとは思わなかった。
碑も発見。
予想していたより下部にあるんですね。
千丈ノ滝は一応登れるそうだが、右岸からそのまま安全に通過した。
巻き終えると、五丈ノ沢かな?それが右岸から落ちている。
貧相だが、凍ったらそれなりになるのかも。
これもサクッと確か右を巻いて進む。
すると、またしても大物。坊主滝。
これは登れないでしょう。右からのルートになりそうな箇所もヌメヌメ・ツルツル。妄想だけ。
観賞と休憩して、定石通り、右のガレ沢を少し登って左岸巻き。
黒いテープが巻いてあったり、古い目印があったり。
踏跡はたくさんあり、小さく巻いた。
こいつも直登は不可能。
右の草付を登って小さく巻く。残置ピトンもここにはあった。
どこかの途中で昨日・今日の焚火があった。
焚火はいいけれど、これは・・・。
前の状態に復帰できてない上、火が完全に消えていないというお粗末な始末状態。
あとは、ベニテングタケ。可食キノコが欲しいよ。
間もなく、二俣に到着。
ここは左俣が圧巻の多段スラブ滝となって落ちているのが、特に印象的。
登れるんじゃないかと、左俣水流部分を中間辺りまで行ったが、そこからが外傾ばかりな上フリクションどころではなく、クライムダウンとなり失敗。
大人しく右から越えた。
フェルト靴のR君も試すが、やっぱりダメだったらしい。
それにしてもロープ無しは怖い怖い。
だが、その上段で、はまる。
右のバンドがあと5mが非常に危険で支点も取れない!
ここから見る右岸も楽そうに見えないので、大きく巻くことに。
一段上のヌメリスラブに残置ピトン・スリングがあり、一体どこに行くの?という場所。
この意味って、さっきのバンドを振り子トラバースしろってこと?と足りない経験・頭を使ったが答えは出ず。
大きく巻いて、ロープも使わずに降りられる所を見つけて復帰。
坊主滝辺りから少し嫌な予感があったが、この先でガスが谷全体を覆い始める。
ガレを通過したり、小さ目の滝を越えていく。
写真など撮ってもどこなのか分からないので、殆ど撮らなかったら、いつの間にか、奥千丈ノ滝らしき所まで来たらしい。
下段を登って、左に吸い込まれたが、そこも残置があって沢から離れ過ぎで良くないと思い、水線に復帰。
登攀具装着し、ロープを使い登っていく。
日が当たらないので寒いよ・・・。
カムを持ってきたのが大活躍した。
ヌメリもあって一々時間がかかった。
ギア不足で、ピッチを切るタイミングが難しく感じた。
ここでガスで見通しが殆どきかず、危険を感じる。
右岸を藪漕ぎしたりする箇所もありつつ、何とか一望できる所に上がった。
再度水線に戻れて安心。
新鮮そうな落石。一体どの辺にいるのか、もう分からないが、ここで終了できない。
このすぐ上のクラックが3本程走ったスラブ滝で、またはまる。
私は水線を行こうとしたが、上部のヌメリで敗退。その後、すぐ手前の残置のあるクラックを上がった。
ここはちょっと緊張。カムを使いながら、残置ピトンも右足で踏むという軟派な登りをしてしまった。
R君はさっさと1つか2つ手前のクラックを登ったそうだが、これも余り良くなかったらしい。
奥千丈ノ滝からここまでは本当に晴れていて欲しかった!
標高としては奥千丈ノ滝は越えたようだが、逆くの字滝なる凶悪な滝があるとのことだが、分からず。
暗くなってきて、藪を漕いだり対岸を見たりしながら、ビバーク適地を探すが、これも長かった。
そして、ようやく発見!!
すっかり暗くなり、ヘッドライト使用で、着替をしてテントとタープを設営。
風が若干あり、濡れて体温を奪われていたこともあり寒かった。
夕食で温かいものを取ると、一気に回復。
露がおりることは無いだろうと考えて、濡れものはタープ下や灌木にかけて干した。
星は見えるが、夜景はいまいち。
20時そこそこにはシュラフに入る。
シュラフカバーと夏用シュラフに、ダウンを着たらとても暑く寝苦しかった。
それでも断続的に睡眠がとれて回復した。
-コースタイム
登山口(5:50発) → 林道終点(7:10) → 尾白川入渓(7:20) → 梯子滝(8:00) → 噴水滝(8:50) → 黄蓮谷出合(9:40) → 千丈ノ滝下(10:40) → 坊主滝下(11:10) → 二俣(12:00) → 奥千丈ノ滝下(13:40) → 2360m適地(18:00着)